働きたくない村人のラノベ日記

ブログ開設2014年5月30日

僕の珈琲店には小さな魔法使いが居候している

僕の珈琲店には小さな魔法使いが居候している (ファミ通文庫)

《あらすじ》
浪人生になってしまった九条篤志。バイト先の珈琲店でおいしい珈琲を淹れることに腐心する日々の中、気がかりが一つあった。それは店の片隅で平日の昼間からランドセルを傍らに珈琲を飲む亜理寿のこと。そんなある日、魔法使いを自称するその少女から篤志はある悩みを打ち明けられ―「人を殺してほしいようなことを言われました。断ると今度はわたしが殺されてしまうそうで、少しだけ困っています」。これは小さな魔法使いと若い珈琲係が紡ぐ奇跡の物語。

小さな珈琲店の落ち着いた雰囲気と魔法使いを自称する少女のもとにやってくる不思議な依頼の数々。この世の理を外れた魔法がもたらす神秘と奇跡、そして依頼を解決に導いた先に待ち受ける結末の数々。
珈琲店でアルバイトをする九条篤志と魔法使いの少女が出会うことで紡がれる物語は、遠い異国の地を連想させる不思議な雰囲気と調和して、ファミ通文庫らしさにあふれる傑作でした。

クライマックスに向けて主人公である九条篤志の身に起きた奇跡について触れると大きなネタバレにつながるから極力言及したくないのだけれど、端的に言えば『感動』という面で大きく刺激を受けて感情を揺さぶられる素晴らしい作品であったことだけは言えますね。
登場人物たちの抱える想いや苦悩、その全てを1冊のなかで綺麗に出し切り、ひとつの結末に収束されていてスッキリした読後感を味わえました。

ゴブリンスレイヤー5

ゴブリンスレイヤー5 (GA文庫)

《あらすじ》
ゴブリン退治から消息を絶った令嬢剣士を探して欲しい―剣の乙女の依頼を受けて、北方の雪山に向かうゴブリンスレイヤーたち一行。しかし、襲撃される寒村、謎の礼拝堂、今回のゴブリンの群れに違和感を覚えるゴブリンスイレヤー。「…学習した、だと?」仲間の痛手を越えて洞窟探索を終えた一行は、あるものを見つける。「外なる、智恵の神。覚知神…」何者かに統率されたゴブリンの巣くう古代の砦にゴブリンスレイヤーたちが挑む!蝸牛くも×神奈月昇が贈るダークファンタジー第5弾!

常に死と隣り合わせのなかでモンスターと戦う冒険者の味わう緊迫感、先行きが不透明で窮地に立たされても可能な限り死のリスクを減らすために最善の選択肢をとるときの行動をとるときの思い切りのよさ。冒険者の日常の過酷さと、一歩間違えればどんな優れた個人やパーティでも命を落とすことがあることをまざまざと見せつけてくれる。

学習したゴブリンによって集団が統率された時のこれまでのゴブリンにはなかった厄介さと狡猾さ。ゴブリンスレイヤーたちでも苦戦を強いられる局面が頻出していて、これまで数々の苦戦を共に乗り越えてきたゴブリンスレイヤーたちでもさすがに誰か脱落者が出ることを想起させられることもしばしば……。

シリーズ最新刊が世に送り出されるたびに、年末のライトノベルのランキングでトップにあがるのもうなずける面白さを痛感させられる。そして、いかに“ゴブリン”という生き物が優れているかがよーくわかる作品です。

極端な話、多くのライトノベルファンが面白いって言って投票するんだから面白さは担保されているので、絶対買って損はないです。

デーモンロード・ニュービー ~VRMMO世界の生産職魔王~

デーモンロード・ニュービー ~VRMMO世界の生産職魔王~ (GA文庫)

《あらすじ》
「『アキカ』様は十魔王の一人に選ばれました」
ゲーマーの妹リオに勧められ、次世代VRMMO『ダブルワールド・オーバークロス』をプレイし始めたアキカを待っていたのは、ゲーム内で10人しか選ばれない『魔王』になったというアナウンスだった。
趣味の園芸をゲーム内でも満喫するはずのアキカだったが、一般プレイヤーに狙われる立場となり、慣れないながらも鍛冶や建築などの生産職メインの魔王たちと共にゲームを進めていく。一方、妹のリオはトッププレイヤーとして打倒魔王の目標に燃えていて――! ?
GA文庫大賞《優秀賞》受賞作。仲間と共に、ゲームスタート!

魔王陣営に与えられた公式チートの特権を活用した、ゲーム開始初期からの高スペックキャラクターと急成長するスキルの数々。多対一の戦闘を想定した魔王たちに対するバランス調整と10人しかいないことを込みした強キャラ補正なおかげで、生産職をエンジョイプレイしている主人公でも手練れのプレイヤーを相手に善戦をしていて、『生産職におけるアイテム作りの楽しさとVRMMOにおける戦闘の楽しさ』の両面の醍醐味が存分に味わえる作品でした。
イラストにおいても、『魔王=人外の存在』を確固とする外見をした美麗なカラーイラストで、抜群のインパクトでもって読む前の期待感を煽ってくるクオリティでした。

唯一、個人的に気になっていたのが、生産職をメインにする主人公のプレイスタイルを強調するイベントが弱くて、プレイヤーVS魔王の構図に収束することが『ダブルワールド・オーバークロス』の世界での生産職の醍醐味を捻じ曲げている気がする。
もちろん生産職としての活動も軌道に乗れば、畑による栽培系の作業もAIで効率化をすれば円滑なアイテムの収集サイクルも出来上がって活動の幅も広がるけれど、ゲーム開始初期で金銭面や環境面でのリソースが限られている中だと、どうしても行動の幅が狭くて、『生産職をやっている!』という印象が弱い。

総合的にはそこそこ面白かったけれど、見開きのカラーイラストのインパクトで期待を持たせられただけに、ガッカリしたと言わざるを得ないです。

暴血覚醒《ブライト・ブラッド》

暴血覚醒《ブライト・ブラッド》 (GA文庫)

《あらすじ》
「血剣!」「血槍!」「そんな小学生の教科書に載ってる血魔法が通用すると思って?」池田弥彦は、血液を自由自在に操る力“血魔法”を学ぶエリート一貫校、赤百合学園の男子一期生。日本で初めて男にも門戸が開かれたこの女の園に、勇んで入る池田と男子生徒たちだったが、ここは―「男子の皆さん。これから三年間、女子の奴隷になって貰いますわ」「力こそが絶対」の魔窟だった!?学生主席で男子嫌いの藤堂率いる女子たちが仕掛ける幾多の横暴。池田は孤立していた少女・如月灯花と共に一大反抗戦を挑むのだが―!?熱き血潮が弾け飛ぶ、血まみれの青春学園異能バトル、開幕!
第8回GA大賞奨励賞受賞作

殺されても生き返ることが可能な空間で行われる殺し合い、“血闘値”が示す強さと“血魔法”を駆使した異能力バトルのシンプルさとバトルにおける多様性を生み出す“固有魔法”の存在がより異能力バトルの醍醐味を引き出していて面白かった。やはり、異能力バトルにおいて、シンプルな能力がゆえに戦局に応じて使い方を変えることで窮地を潜り抜ける。戦いのなかでのロジックを挟むことで、熱いバトル展開を楽しむことができる、そんな作品でした。

主人公の記憶から意図的に排除されている過去のエピソードをほのめかす幼なじみのヒロインの言動、クラスに突然やってくる訳あり転校生ヒロインとの日常と当て馬にされる幼なじみのポジション。突如関係が急接近する主人公と転校生ヒロインに敗北感を味わう幼なじみヒロイン。学園ものの王道をなぞりつつも、綺麗に異能力バトルに落とし込んでいて、なおかつバトルを盛り上げる展開にまで昇華させられていて、新人賞作品としては手堅い面白さがありました。

ゲーム・プレイング・ロールver.1 村娘。をヒロインにプロデュース

ゲーム・プレイング・ロールver.1 村娘。をヒロインにプロデュース (角川スニーカー文庫)

《あらすじ》
ここはゲームの中の世界。『イベントプランナー』のマナトは、セクハラ体質がたたって“村”を転々とする生活を送っていた。決意新たに辿り着いた「エンドール村」には、個性豊かな村人が―たったの3人。その場で村長に任命されてしまったマナトは、プレイヤーをもてなすため、ギャルゲーにRPGにとイベントを仕掛けるが…?村娘をヒロインへと導き、破綻寸前の村をバズらせろ!!

ゲームの中の世界を成り立たせているのはゲームの世界の住人である。ギャルゲーの世界はヒロインを演じるキャラクターが事前にオーディション形式で審査が行われ、メイン・サブヒロインの役職が与えられ主人公の行動に応じた演技をすることで、ギャルゲーの世界が成り立っている。
『ツボを割るとお金が出てくる』『人の家のタンスをあさってアイテムをゲット』そんなゲームの世界だからこそ成立する鉄板ネタも、実は裏でゲームの世界の住人が仕込んでいたから可能……、ゲームの世界をメタると何もかもがバカバカしく見えてきて酷く笑えてきてしょうがない。『作者である木村心一が書くライトノベルは笑える!』と言っても過言ではないくらい、キャラクターたちがイキイキしていて楽しい作品で、安心して作者買いができる。

キャラクター同士のやりとりが笑いを取りに行かせるために動かしているというよりも、ごく自然な流れで会話が進んでいるはずなのに、なぜかバカな方向に話が進んでいるから、自然と笑いがこみあげてくる感じです。

角川スニーカー文庫の作品のなかでも個人的にイチ押しなので、是非とも読んでもらいたい作品です。

エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~ 6

エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~ 6 (MF文庫J)

《あらすじ》
TVアニメの世界から現れたエイルン=バザットが『ドール・ワルツ・レクイエム』の主人公ジン・ナガトに殺害されて1年。雷鳥失脚で氷室義塾は実質的に解体、規格外十番は世界列強に売られ散り散り、目前の勝利は子どもたちの手から零れ落ちた。ジンはクイーン狩りを行い、次々と世界各国と同盟を結んでいく。「俺はエイルンみたいな悠長なことはしない…無駄はない方がいいのさ。物も時間も…人の命も」そのような中、真紅の戦騎装でヘキサの実験施設や非合法武装組織を潰して回る謎のテロリストが出現する。果たして彼の正体は!?爆発する爽快感!とにかく熱くて、火傷する、新世代ロボットライトノベル。シリーズ“最泣き”の最新刊で第二部開始!

このロボットアクション作品の戦いを繰り広げているときの大迫力と氷室義塾のメンバーの熱い駆け引きが映像化されたらと想像すると、いかに映像映えする作品であるかが伝わってくる。

機体のイラストとキャラクターのイラストでイラストレーターを分けることで専門性を発揮し、機体の外観の細部に至るまで丁寧に描かれていて、金属の質感と重厚な色合いがイラストへの個性とこだわりを表わしていて、カラーイラストにしたときの迫力が凄いです。

キャラクターごとのポジションと役職も概ね固まっていることから、かなりの大所帯の氷室義塾のメンバーが一斉に行動を起こしても状況把握がスムーズにいく。物語の山場に突入して全員の行動が実を結んでひとつの結果に収束する展開においても、メンバーの行動がつかめるのは大いに貢献していて読み手としても非常に助かる限り。

唯一残念なのは、大事なシーンをイラストにしたときのキャラクターの表情や外見の描き分けができていないと感じられるほど区別がつきにくいところ。キャラクターのイラストが出るたびに自分が誰を見ているのかが文脈からしかつかめないのがストレス。

キャラクターのイラストの点を除けば、MF文庫がほこる次代のアニメ化候補作品とも呼べるくらい軌道に乗ったシリーズなので、興味のある方は是非購入してみてください。

ユリア・カエサルの決断 1 ガリア戦記

ユリア・カエサルの決断 1 ガリア戦記 (オーバーラップ文庫)

《あらすじ》
ローマの英雄カエサルは巨乳で借金まみれの女好き!?
好きな時代は古代ローマ、尊敬する偉人はローマの英雄ユリウス・カエサル――
そんなローマ好きの高校生・糸原聖也(セイヤ)はある日、月の女神を名乗る美女に異世界へと転送される。そこは古代ローマそっくりの世界。
セイヤは憧れのカエサルに出会えたが……異世界のカエサルはユリアという名の金髪美少女だった!!
ユリアの家に住むことになったセイヤは、衰退するローマを変えるユリアの夢を知り、協力を誓う。ところがユリアは女好きで借金まみれの問題児!?
セイヤはユリアの計画する公共事業とイベント開催の資金を借りに行くことになり――!?
少女の夢が世界(ローマ)を変える異世界英雄ファンタジー、堂々開幕!

歴史上の偉人を土台にしているだけにキャラクターのディテールが丁寧に作られていて、古代ローマ生活様式や文化を織り交ぜることで独特の雰囲気と日常風景を醸し出すまでに昇華されており、新人賞作品としてはこの上なくグッドな異世界英雄ファンタジー作品でした。

もっとも、ユリア・カエサルに関しては門外漢であり、“カエサルが美少女ではない”ということ以外がどこまで史実をなぞっているのか把握できていないけれど、ローマ好きの高校生主人公が熱く丁寧に解説してくれるおかげで、自分の中で大まかにかみ砕いて解釈しながら読み進めることができてスッと内容も入ってきて読みやすかったです。

主人公がローマに召喚されることになったきっかけも作中で事前に説明があったように、“ユリア・カエサルを本来辿るべき未来へ導くため”となっており、過去の英雄に出会って歴史を改変する壮大なファンタジー作品としての演出を冒頭にやることで、読み手に対して期待感を煽り、その先の物語を読ませるつかみにもなっていて良かったです。

そして、【歴史の改編】を目論むだけに、いわゆる【歴史からそれたときの代償】がいかに危険か。それを象徴する概念の存在もシンプルかつインパクトのある演出で表現されていて、形のない存在に直面して窮地に立たされた時の絶望感がひしひしと伝わってきて手に汗握りました。

新人賞作品としても個人的には『続きが読みたい!!』と思える作品なので、可能であればオーバーラップ文庫には是非とも続巻を検討してもらいたいものです。