働きたくない村人のラノベ日記

ブログ開設2014年5月30日

賭博師は祈らない(2)

賭博師は祈らない(2) (電撃文庫)

《あらすじ》
奴隷の少女リーラの救出劇から一週間。賭場を負かし一人の女を守った代償はしかし大きかった。「負けない、勝たない」をモットーにしていたラザルスは賭場に出向くこともできなくなり、帝都を旅立つことを決める。それは、少しずつ心を開き始めたリーラを連れての道楽旅行になるはずだったが…。道中立ち寄った村でラザルスを待ち受けていたのは、さる事情で窮地にある地主の娘エディスからの突然の求婚だった。一方、リーラは二人のやりとりを覗いてしまい、自分はラザルスにとって不要なのではないかと想い悩み始める。「奴隷」である彼女が出した結論とは―。少女たちの想いを受け、やがてラザルスは危険なギャンブルに打って出る。

ラザルスが己のモットーを曲げた代償として居住地を去り、リーラと共に旅に出る。前巻の綺麗な締めくくり方とデビュー作から順調に人気を博してきたこの作品ですが、2巻へのつなげ方も詰まることなく快調な滑り出しでスタートしていて、もう作者が書きたいエピソードを書ききるか売り上げと続巻の刊行を天秤にかけるかに入っている感じ。電撃文庫の新人作家はシンプルに“面白いもの”を書く実力が他レーベルに比べて圧倒的に高いので、心おきなく安心して楽しめるところが最高です。

“賭博師”、“ギャンブル”といった登場人物たちが身を置く世界をより確固としたものにするエピソードの絡め方からも、作者ならではの作品が描かれていて個性を感じられる。名うての賭博師として知られているラザルスが賭けのさなかに披露するイカサマのテクニックやチェスなどのシンプルに実力を競う場面において、実践的な技術の一端や勝利するための土台を丁寧に描かれている。それにより、『魅せる場面はとことん魅せていく』というパンチが効いていて、より一層、アウトローの世界で生きる賭博師たちの世界を魅力的なものにしている。

幻想戦線

幻想戦線 (ダッシュエックス文庫)

《あらすじ》
武力闘争が続発し、各国が軍隊強化に奔走する世界で、人類は進化を遂げる。“命の固形化”。他者から命を奪い取り、時には己の命を兵器に変える能力を持つ者が現れた。その一人であるハイトは兵士養成機関で歴代最高成績を修めた「首席兵」。彼は戦争ですべてを奪われ、その復讐のため戦争国家への雇用を望んでいた。だが、兵士競売で世界最強軍事国家・マグナキアのツミビに競り勝ち、ハイトを落札したのは、非戦争国家・トラキアの女性国王・シンク。彼女はハイトを軍隊ではなく自衛力として迎えたいと告げる。戦わず、護る。二人の決意が新たな兵器を生み出し、戦争を、世界を変える!傑作王道ファンタジー開幕!!集英社ライトノベル新人賞特別賞受賞作

各国が武力闘争に備えて軍隊の強化に奔走せざるをえない世界の情勢が丁寧に練られていて、導入の部分から独自の世界観を作りこんできて目を引くファンタジー作品。“命の固形化”により自らの命を素材に兵器に作り替える能力を駆使して死闘を繰り広げることが、兵士の戦いにおいて『命を固形化しているのだから“盾”の形状をした兵器は無意味』という価値観が生まれるまで、“命の固形化”という設定の視野をより広げていて、素直に面白いと思いました。

バトル要素を突き詰めていく上では様式美で使われる呪文詠唱よりも、こういった実践的な要素をシンプルに煮詰めていった内容はとても好みなので、もしも激しいファンタジーバトルを繰り広げるシーンを書くことがあるならばそのときが訪れることを期待したいです。

あえて無粋なツッコミを入れるならば、お約束と言わんばかりにヒロインであるシンクと大浴場でばったり遭遇するシーンをねじ込んできたところ。それまでの流れからも、イラストレーターであるニリツさんの描く挿絵の雰囲気からも十分に『武力闘争が勃発する世界』の殺伐とした雰囲気も和らいでいたと思うので、個人的にあの展開はいらなかったかな。
それならば、主人公のハイトの過去を深く掘り下げて回想シーンにリソースを割くなり、他にも用途はあったのではないかと思いたくもなるけれど、新人賞デビュー作としては申し分なく楽しめる作品でした。作者の今後の活躍にも期待です。

誰でもなれる!ラノベ主人公 ~オマエそれ大阪でも同じこと言えんの?~

誰でもなれる!ラノベ主人公 ~オマエそれ大阪でも同じこと言えんの?~ (電撃文庫)

《あらすじ》
やれやれ系ラノベ主人公に憧れ、「異能バトルが起きたらなあ」と夢想する平凡な高校生・恭介。大阪の高校に転校してきた彼がオタ街・日本橋で出会ったのは、ダメ親の借金を返済して魔術結社からの足抜けを願う魔術師の少女、“ポンバシワルキューレ”の異名を持つデスコア系地下アイドル、異世界転生者を自称するポンコツ美女、家出中の病弱薄幸な幼女、そしてヤクザと本物の悪魔で!?騒動の始まりは恭介が日本橋でゲットした一冊のレア同人誌。思わぬ幸運にはしゃぐ恭介だったが、それをきっかけに身の回りでリアル異能バトルが勃発したことには全く彼は気づかなかった…。オタクでオカルトな大阪日本橋の日常系魔術群像ストーリー、ゆるっと開幕!

大阪を舞台に魔術師たちが奔走して1冊の激レアエロ同人誌を争って魔術バトルを繰り広げる。あえて大阪をチョイスしたメリットを探すとなると、『お笑い芸人とヤクザに繋がりがあるところが島〇紳助』『主人公のアルバイト先が大阪らしい飲食店』くらい。ほとんどのキャラクターが標準語だったけれど、今回の物語のメインが主人公の周囲で巻き起こる同人誌騒動だったのだからそれもしょうがないか。不幸にも、大阪の高校に転校してきた割に交流があるのが、隣の席の根暗で言葉少ない腐女子だけだから、大阪感を感じる要素が少なかったのかも。まあそれほど大事なことでもないから大して気にはならないのだけど。

あらすじでも銘打つように“日常系魔術ストーリー”なだけに、その筋では名の通った魔術師たちが本気で魔術をぶっ放して激しく争う割には、締まりのないゆるい感じで騒動が収束していきます。多人数の視点から物語の経過をたどっていくなかで、サザエさん並の世間の狭さで主人公が各キャラクターとコンタクトをとっていることにも驚きだけれど、これだけの数のキャラクターを配置していながらもテンポよく物語が動いていくので、常に変化をかみしめることのできる作品でした。
キャラクターの数の割にはそれぞれがしっかりとポジションがとれていて整理がしやすいので、スムーズに読み進めることができたのも大きかった。
イラストレーターに有名なkarory氏をあてたことを加えても、十分に面白い作品だったと思いました。

キラプリおじさんと幼女先輩(2)

キラプリおじさんと幼女先輩(2) (電撃文庫)

《あらすじ》
「今日こそ勝っ…てねぇぇぇ!」「私のコーデを勉強することね、2位」女児向けアイドルアーケードゲーム「キラプリ」に情熱を注ぐ高校生・黒崎翔吾と小学生の新島千鶴。そんな二人の前に凄腕のキラプリプレイヤーあらわる!?「アタシはめちゃカワ★JSアイドル美咲丘芹菜!」翔吾にますますロリコン疑惑が掛けられる中、全国のアミューズメント施設と連動した、「キラプリ」初の大型イベントが開催!翔吾はこのイベントを利用して、千鶴に友達を作ってあげようと奔走するのだが…。夢いっぱいの遊園地を舞台に、もどかしくも熱い物語が再び!

カラーもモノクロも安定してハイクオリティなイラストで神ってる!
新たな凄腕キラプリプレイヤーとの邂逅により、女児向けアイドルアーケードゲームの新たな境地に挑む千鶴と翔吾。
これだけやりこみ要素を追求した音ゲーにもなると、全国ランキングで競い合いたくなるのもうなずける。あえて無粋なツッコミを入れるならば、音ゲーとして譜面上に存在しないリズム感を追求し過ぎて、既に全国規模に展開されるアーケードゲームで補える技術の粋を越えている気がしないでもないが、気にしたら負けな気がする。
それだけ、自分だけのオリジナルキャラクターをメイキングしたり、プレイヤースキルを磨いたりなど、様々な要素において深くやりこむことができて、翔吾たちが熱中するのもうなずける面白さがある。

そんなキラプリプレイヤーたちのゲーセンでのガチなプレイと定期的に開催されるイベント特典を回収するために、高校生の翔吾と小学生の千鶴が遠出をして休日を満喫する光景を目にすることができたり。二人の関係に年齢差もあるために、千鶴の好意も主人公の鈍感さに拍車がかかっているが、ある種のラブコメ感を味わうにしても十分に楽しめる展開でした(個人的には新キャラの女子小学生のほうが可愛くて好みではある)

イラストレーターのMika Pikazoさんの描くキャラクターをこれからも見ることができるような3巻の刊行予定を臭わせるあとがきではありましたが、いつも楽しみにしている作品なので是非とも新刊にまでこぎつけてほしいです。

ゲーム・プレイング・ロールver.2 妹が邪神になりまして。

ゲーム・プレイング・ロールver.2 妹が邪神になりまして。 (角川スニーカー文庫)

《あらすじ》
マナトの妹・まどかがエンドール村で働き始めてはや1週間―平々凡々なマナトと違い、まどかの剣術・錬成術は一級品、ロボット操縦もお手のもの。一方ルピアはロボットモノの仕事をきっかけに、マナトが気になるご様子で。そんないつもとちょっと違う村に、『裏ボス』イベントの仕事が舞い込んできたのだが…ある“ウラ事情”からまどかがボス=『邪神』を演じることになり、あげく『邪神スーツ』の力で暴走してしまい―!?

ターン制の戦闘でおなじみのロールプレイングゲームからレトロなシューティングゲームなど、ゲームの世界におけるありとあらゆるお約束を作中で平然とメタってくるたびに、妙に一本筋が通っていて納得させられそうになる。
ゲームの世界の住人たちが『初見のプレイヤーには死を』、『頑張ればクリアできる程度』かつ『頑張れば死なない程度』を意識し、『プレイヤーに対してのワンターンキルはなるべく避ける』、『裏ボスだから二回攻撃くらいの特例は許される』『ターン制だから相手の攻撃が絶対に避けない』。そんな、ゲームの世界の住人たちが徹底的に顧客を満足させるために固めた計画のもとで、ゲーム業界が作り上げられている……、ものすごくバカバカしいけれど、それを真面目にやる姿が失礼ながらコミカルに映ってしまう(笑)

基本的にギャグ路線の作品を書いてくる作者で、いつも独特の世界観を創り上げてくるけれども、誰もが疑問を持たないような『ゲームの世界の常識』に、あえてメスを入れてくるところが絶妙にツボって笑いを誘ってくる。
2巻も勢い衰えることなく面白いので、まだ読んでいない人には是非ともおすすめしたい作品です。

語り部は悪魔と本を編む

語り部は悪魔と本を編む (ファミ通文庫)

《あらすじ》
拾い上げ作家(デビュー未確約)の中村雄一は、理想に限りなく近い女性の絵美瑠と出会い、交際することになる。しかしある日、絵美瑠が雄一の新たな担当編集者であることが発覚!!二人は動揺するも雄一のデビューに向けて、恋人としてだけでなく、作家と編集者としても頑張っていこうと誓い合うが、二人の前にはデビューを阻む悪魔のような編集長が立ちはだかる!二人の夢の行方は―!?今“一番応援したい”出版業界の恋と戦い!

ライトノベル業界物のジャンルを走りつつライトノベル作家×編集者の運命的な出会いと恋の行方、さらには拾い上げ作家でデビューを目指す主人公が直面する現実を本気で叩きつけてくるので、どちらのジャンルもハイレベルで楽しめてなおかつ上手い具合に両ジャンルが調理されていて、しばらくぶりに傑作を読んだ感じがします。

偶然の出会いがきっかけで編集者の絵美瑠に恋に落ち、ひょんなことがきっかけで食事に誘われ、記憶をなくすほどに酔いつぶれた状態で主人公が打ち明けた愛の告白から交際スタートとなり、出版社で自分の担当編集者として紹介されたのがまさかの彼女。怒涛のように二人の関係性が進展するなかで、仕事とプライベートが混同しまくったバカップルぷりに口元がにやけるくらいに微笑ましくもあり、最高の二次元ヒロイン像でもあるところが良かった。『経費で落とせるデート代』というパワーワードが羨ましすぎる。

これだけの可愛いヒロインでもあり、ライトノベル作家デビューを目指す主人公が出版業界の現実にぶつかっている展開にも深く介入して、ひとりの登場人物としても立ち回っていて、ライトノベル業界に切り込んだ内容も幅広く触れられていて面白かった。
下積み生活が長いライトノベル作家志望者である主人公には辛辣に創作論をぶつける展開が多く、それを物語に落とし込むにおいての掘り下げも細かいので、これからライトノベル作家を志す人たちに対しての精神論が詰まっているとっても過言ではないレベル。

最近のファミ通文庫の刊行物のなかでは間違いなく傑作に入ると思うので、興味のある人はぜひ読んでみてください。

女神の勇者を倒すゲスな方法 3 「ボク、悪い邪神じゃないよ」

女神の勇者を倒すゲスな方法 3 「ボク、悪い邪神じゃないよ」 (ファミ通文庫)

“あらすじ”
「女神教の大神殿に攻撃を仕掛ける」真一は宣言した。最強の魔法使い“聖女”まで魔王城の住人となり、人間側の理解者も得られた。今が攻め時と、セレスと共に聖都に乗り込んだ真一は四大枢機卿の一角、聖母卿に狙いを定め攻略を開始する。だが、魔王たちが平和に暮らせる世界まであと少しに迫ったとき、女神の祝福を得たあの男が一万の勇者の大群を率いて復活しようとしていた。
ゲス参謀 VS 女神教、最終決戦!? 大人気異世界勇者攻略譚、第三弾。

デビューから着々と(自分のなかで)人気作として話題沸騰中の異世界ファンタジー作品も続巻の目処が付きそうなことが何よりも嬉しい。
“女神の勇者”として不死の能力を授かった勇者たちを魔王の参謀として暗躍する真一が、あらゆる手口で再起不能に陥れて、難攻不落で打つ手なしに思える状況を一挙に覆して攻勢に移す。やり方はゲスだけど、『物理的に死なないなら精神的、社会的に抹殺しよう』を実現させるんだから恐ろしい。

今回の騒動のカギを握り、真一いわくもっとも攻略しやすい人物が“聖母卿(女性:40代)”で、期せずして真一の周囲にいないタイプの女性になったことがきっかけで、魔王陣営のヒロイン勢に嫉妬される羽目になったのは言うまでもないですね。そんな光景を眺めながら「セレスさんが一番可愛かった!」「デレたときの態度にキュンとくる!」とか感じつつ、ニヤニヤしながら楽しめたんだから、遠坂あさぎ神のイラストと合わせて満たされていた自分としてはもう最高でした。
この件も踏まえて、全体的にヒロインの感情を揺さぶることでリアクションを引き出す展開が多いので、キャラクターがイキイキとしています。それだけに、魔王陣営のメンバーたちで盛り上がっているシーンは特に楽しくて癒されます。