働きたくない村人のラノベ日記

ラノベの感想ブログ。開設2014年5月30日

ヴァルハラの晩ご飯III ~金冠鳥と仔鹿のグリル~

ヴァルハラの晩ご飯III ~金冠鳥と仔鹿のグリル~ (電撃文庫)

《あらすじ》
イノシシのセイです!世界樹倒壊の危機も、ヴァルハラの動乱も落ち着いて、平和な日々が戻ってきました。でも、そんなボクの前に、恐るべき強敵が現れたんです。その名は―ヴァルハラ大農園を管理する鹿のイクス!彼の肉を食べたオーディン様が「ンまぁ~い!!」となってしまったからさあ大変!ボク、『晩ご飯』をクビになっちゃうことに…。もちろん死に続ける日々にはうんざりだったけど、このお役目から外れたら、ブリュンヒルデさまに会えなくなっちゃう!待ってろ、イクス!ボクは必ず、君より美味しくなってみせる!第22回電撃小説大賞“金賞”受賞作の『やわらか神話』ファンタジー第3弾!

ヴァルハラの晩御飯の座を賭けと最高の食材にたどり着くための命を賭けた戦いの開幕。
イノシシのセイを食材に使った料理に付加されるグルヴェイグの能力もオーディンの決定により不要のものとなった。それならイクスにセイの能力を付加させて食材にすれば、ヴァルハラの晩御飯の味の底上げが可能になる。セイ君はイクスを読みがえさせるのに必要な分を提供してくれるだけで十分だから、実質的にクビね♪
「自分が食材になれるッスカ!!」喜々としてオーディンの命令に舞い上がるイクスの死生観と神経を疑いたくなるけど、よく考えたら毎晩、煮えたぎる寸胴鍋に投身自殺するイノシシの誰かさんを目撃してきたから感覚が麻痺しつつある。人間は死んだあともわずかに意識が残るって説を前提に考えると、死ぬたびに精神を摩耗させて荒れ狂いそうだけど、そもそもが人語を介するイノシシだった件が盲点だった。

クビを回避するために行動を開始するセイの模様とヴァルキリー九姉妹を巻き込んでの大騒動も、ヴァルハラの晩御飯の独特の世界観に色付けされていて、見る景色のすべてが新鮮でした。だってね、悩みを解決するなら両親に相談してみればいい……、からのイノシシ一家宅に訪問とか、そんな展開これまで読んだことないよ。

徐々にセイの抱えるグルヴェイグの力の正体が明らかになりつつもあり、いつか世界を揺るがす危険なにおいを漂わせる演出もあって続きが気になる作品。


(追記:補足)
1巻の頃は神話ベースのキャラクター設定とヴァルキューレ九姉妹全員が一度に登場してきたことで個々のキャラクターを認識しにくという意見を目にしてきたけれど、巻数を重ねるごとに自然と慣れてきて、今ではほとんど気にならないレベルですね。いまだに自分のなかでは“ヴリュンヒルデ”のキャラクターしかインプットされていないけれど、基本的に九姉妹がソロでストーリーに介入してくる場面はほとんどないので違和感を抱くことなく普通に楽しめます。