働きたくない村人のラノベ日記

ラノベの感想ブログ。開設2014年5月30日

リベンジャーズ・ハイ

リベンジャーズ・ハイ (ガガガ文庫)

《あらすじ》
人体に有害な『砂塵』によって、文明が一度滅びた近未来。異能を操る『砂塵能力者』たちが出現し、力を持っていた。“掃除屋”チューミーは、因縁の復讐相手・スマイリーの行方を探りながら、殺しを請け負っている。あるとき、治安維持組織の『粛清官』に身柄を拘束されてしまったチューミー。だが、意外な提案を受け、一時的に協力関係を結ぶ。バディとしてあてがわれたのは、「優秀だがワケあり」のシルヴィ。出自も性格も正反対の二人は、反発しつつスマイリーを追うが…。第13回小学館ライトノベル大賞・優秀賞受賞作。

人体に有害な『砂塵』が舞う退廃的な世界。『砂塵』により異能力を操る人類。チューミーが復讐者となる全ての元凶“スマイリー”に対する異常とも言える執念と殺意の感情がアウトローな業界で殺しを生業にしている側面もあり、ダークな世界観がしっかりと構築されている素晴らしい優秀賞作品だったと思います。
新人賞受賞作品は既視感のある作品でありつつも斬新な結末を迎えるものや独創的な世界観とキャラクター設定で個性を前面に押し出してくる作品など様々なものがありますが、今回は後者のようなタイプでした。

“復讐者”として人生の全てを1人の人間を殺すことにささげるチューミー。なぜ、チューミーが復讐者に身を費やしたのか。チューミーが砂塵能力者では無いにも関わらず常人をはるかに凌駕する身体能力をもっているのか。そして、頑なに自身のパーソナルな情報に口を閉し心を開かないのか。すべての発端はチューミーの悲惨な過去にありました。
しかし、“スマイリー”の行方を追うため一時的に協力関係を結ぶことになったシルヴィともまるで会話にならず意気が全く合わないバディに思えてけれど、死線を共に潜り抜けていくうちに徐々にチューミーの心境に変化が芽生え距離を縮めようと自ら行動を起こす光景に心が打たれました。チューミーの幼少時代の出来事で全てがマイナス感情に振り切れて命までも投げ打つ人間が、自分の人生で生きる理由を見出していく姿が段階的に丁寧に表現されていたのでより強烈に感動的なシーンが強烈に焼き付けられました。

優秀賞受賞策にふさわしい圧倒的な世界観と確かな技術力に裏打ちされた素晴らしい作品です。興味のある人は是非読んでみてください。