働きたくない村人のラノベ日記

ラノベの感想ブログ。開設2014年5月30日

帝国の勇者 世界より少女を守りたい、と“まがいもの"は叫んだ

帝国の勇者 世界より少女を守りたい、と“まがいもの

《あらすじ》
「“勇者殺し”はどこだぁぁぁぁ!!」ベルカ帝国が誇る無敵の異能兵士、“帝国の勇者”が反乱軍に殺害された!?事態を重視した帝国は、勇者カイムを報復のため派遣するが…。カイムの前に現れた標的は“勇者殺し”に殺された仲間のシオンだった!!しかも、古の英雄が振るった伝説の聖剣を掲げ、帝国の殱滅を宣言!?聖剣に支配されたシオンを救うため、カイムは“勇者殺し”こと、蘇った英雄に挑むが苦戦。力量差を覆そうと、最後の切り札を使う―。第11回GA文庫大賞奨励賞。英雄の理想と少年の誓い、勝ち残るは!?

ベルカ帝国の異能兵士“カイム”の目の前に現れたハルダート王国の勇者殺しはかつて殺されたはずのシオンだった。
聖剣により肉体と精神を支配され、古代の英雄の力を身にまとい聖剣の力を操る強敵を目の前に、家族同然に育ったシオンを救うために剣を交え決断をくだす戦いの物語。

ベルカ帝国が有するは人為的に作られた異能兵士の存在。人体に細胞を取り込むことで一騎当千の戦力を有し、“帝国の勇者”として異名が広く知れ渡るほどの存在で戦場を駆け巡る。
カイムを始め、同じく帝国の勇者と呼ばれるセエレやミーナの異能は自然の法則を捻じ曲げて戦局を有利に働かせるほどの強力なもので、混迷極まるハルダート王国との戦闘のなかでも大いに活躍していて、“異能兵士”と“凡庸な兵士”との違いがハッキリと認識できました。

そこに立ちはだかる“勇者殺し”の存在。カイムたちにとっては因縁深い相手でもあり、精神を支配されたシオンの肉体を前に1人の人間としての葛藤と軍に属する兵士として敵を切り伏せる葛藤なども丁寧に描かれていました。平穏な日々のなかで語り合う姿や彼らの出会ったシーン、生い立ちなどを通すことで、年若いカイムたちの家族愛のようなものが戦場でシオンを前にして抱いた心境を表現していてより切なく感じてしまいました。

GA文庫大賞奨励賞作品としては全体的にクオリティーも高く、登場人物たちのキャラクター像やバックボーンもしっかりと描写もできていて、王道なジャンルとしても手堅く仕上がっている作品に感じられました。
個人的な見解としては、カイムがシオンに抱く感情をより印象付ける強いエピソードがもうひとつ欲しかったことと、武器のデザインがシンプル過ぎて戦闘シーンで鍔迫り合いなった際の迫力が弱いことが少し気になりました。
それでもかなり好みの作品なので2巻もとても楽しみにしています。