働きたくない村人のラノベ日記

ラノベの感想ブログ。開設2014年5月30日

転生少女の履歴書 1

転生少女の履歴書 1 (ヒーロー文庫)

《あらすじ》
優秀な成績を収めていた少女は、親の愛に恵まれずに不慮の事故でその人生を終える。転生先は、ろくに畑の知識もなく、魚を捕まえる術さえ知らない農民達が暮らす開拓村。その村の6人兄弟の末娘としてリョウと名付けられる。あまりにも極貧な生活のなか、身売りされないため、飢え死にしないため、また、前世では得られなかった親の愛を求めて、村の改革に奔走する。リョウの活躍で、とりあえず飢え死には免れたと思ったところに、魔法使い達がやってくる。魔法使いが絶対の支配階級である異世界で、リョウは前世の知識や技術を役立たせながら、農家、貴族の小間使い、山賊…居場所を転々としていく―。

前世で身に着けたあらゆる知識を総動員して転生した異世界で第二の人生を送る少女の日常を克明に描いた壮大なストーリー。貧困に苦しむ農村地帯で生を受け、リョウの優秀さを耳にした貴族のメイドとして雇われたと思ったら今度は盗賊に襲われて再び放浪生活を辿ることになる。この常に移り変わっていく激動の環境をもじったのが転生少女の履歴書というタイトルの由縁なんですかね。出版元がヒーロー文庫なだけにそのページ数も文字数も圧倒的なだけに、1巻にして壮絶な人生を歩んでいるリョウの日常生活の密度の濃さが凄い。

リョウの前世の知識と地の頭の良さもあってこのまま定住していけばさらなる発展と良好な生活を維持できる……、思いわせつつも、子どもである点が大人の思惑にあらがうことができず流される状況にもどかしさを感じられる。子供らしからぬ言動と行動力もあって、新天地でも常に良好な人間関係を構築していくさまを見せられるだけに、リョウの身に降りかかる境遇がかわいそう心が苦しくなってきます。これまで築き上げてきたものが一気にリセットされて再出発させられる展開が特にキツい。それだけに感情に訴えかけられるものがあって、1巻でリョウが辿った厳しい生活とそのなかでのやりとりを見ていると泣きたくなる。これはもう文句なしにおすすめできる作品です。