《あらすじ》
奴隷の少女リーラの救出劇から一週間。賭場を負かし一人の女を守った代償はしかし大きかった。「負けない、勝たない」をモットーにしていたラザルスは賭場に出向くこともできなくなり、帝都を旅立つことを決める。それは、少しずつ心を開き始めたリーラを連れての道楽旅行になるはずだったが…。道中立ち寄った村でラザルスを待ち受けていたのは、さる事情で窮地にある地主の娘エディスからの突然の求婚だった。一方、リーラは二人のやりとりを覗いてしまい、自分はラザルスにとって不要なのではないかと想い悩み始める。「奴隷」である彼女が出した結論とは―。少女たちの想いを受け、やがてラザルスは危険なギャンブルに打って出る。
ラザルスが己のモットーを曲げた代償として居住地を去り、リーラと共に旅に出る。前巻の綺麗な締めくくり方とデビュー作から順調に人気を博してきたこの作品ですが、2巻へのつなげ方も詰まることなく快調な滑り出しでスタートしていて、もう作者が書きたいエピソードを書ききるか売り上げと続巻の刊行を天秤にかけるかに入っている感じ。電撃文庫の新人作家はシンプルに“面白いもの”を書く実力が他レーベルに比べて圧倒的に高いので、心おきなく安心して楽しめるところが最高です。
“賭博師”、“ギャンブル”といった登場人物たちが身を置く世界をより確固としたものにするエピソードの絡め方からも、作者ならではの作品が描かれていて個性を感じられる。名うての賭博師として知られているラザルスが賭けのさなかに披露するイカサマのテクニックやチェスなどのシンプルに実力を競う場面において、実践的な技術の一端や勝利するための土台を丁寧に描かれている。それにより、『魅せる場面はとことん魅せていく』というパンチが効いていて、より一層、アウトローの世界で生きる賭博師たちの世界を魅力的なものにしている。