働きたくない村人のラノベ日記

ラノベの感想ブログ。開設2014年5月30日

理想のヒモ生活 10

理想のヒモ生活 10 (ヒーロー文庫)

《あらすじ》
妊娠中の女王アウラに『治癒術士』を呼ぶため、再び双王国へ『瞬間移動』する善治郎。さらに、フレア姫も長期航行を補助する魔道具を求め、双王国へやってくる。双王国に到着した善治郎を最初に待っていたのは、フランチェスコ王子だった。カープァ王国で作製された『ビー玉』を渡され、驚愕するフランチェスコ王子。だが、同時にフランチェスコ王子も、ある構想を打ち明け、善治郎を驚愕させた。その後、聖白宮でのベネディクト法王との面談は問題なく終わり、約束通り『治癒術士』であるイザベッラ王女がカープァ王国に来ることが決定。数日後、フレア姫と一緒に善治郎は、魔道具購入の交渉に赴くのだが…。

内政・外交の場における交渉の最中のやり取りに込められた思惑が丁寧にかつコンパクトにまとめられ、登場人物がそれぞれ見聞きした情報をもとに筋道を建てて交渉相手の狙いを見抜くプロセスが非常に読み解きやすい。1冊に詰め込むボリュームが大きすぎて、物語全体の進行度合いを俯瞰するとそれほど進展を感じられないけれど、物語全体のテンポを度外視したライトノベルとしての面白さがあった。

異世界を舞台に現実世界の物資を少なからず持ち込み、ビー玉の製造技術が思わぬ方向で異世界の血統魔法に影響を及ぼし、たったひとつのビー玉を交渉のカードに持ち込むことになったり。善治郎の息子の善吉が将来的にカーヴァ王国や双王国やウップサーラ王国にもたらす影響まで視野を広げ、今後の諸外国との付き合いを考えて善治郎が双王国に赴いている現段階から諸外国への対応を考慮したり。
政治的な物事における長期的な可能性を見据えた思慮深さがうかがえる展開が様々な場面で物語に組み込まれていて、頭脳バトルを繰り広げているような読み応えがある作品でした。
さすがは小説家になろうのトップクラスの作品ですね。

理想のヒモ生活 1 (ヒーロー文庫)

理想のヒモ生活 1 (ヒーロー文庫)