働きたくない村人のラノベ日記

ラノベの感想ブログ。開設2014年5月30日

キミの忘れかたを教えて

キミの忘れかたを教えて (角川スニーカー文庫)

《あらすじ》
「残された余命は半年―、俺はこのまま死ぬつもりだった」大学を中退してニートとなり、生きる価値がないと感じていた松本修は、昔からの悪友・トミさんの誘いで母校の中学校を訪れる。そこには芸能人となってしまった因縁の幼馴染み・桐山鞘音がいて…。この出会いが再び修の運命を突き動かす。『天才ゆえの孤独を抱えたヒロイン、凡才ゆえに苦悩する主人公。二人のすれ違いと、遠回りな青春に引き込まれました』『逃げて逃げて、逃げ続けたクズに残った一つの約束。胸が熱くなりました』発売前から感動の声多数。掴めなかったチャンス、一度何かを諦めてしまった人に贈る、大人の青春物語。

仲の良かった幼馴染み。天才的な音楽の才能をもつ桐山鞘音の側で、追いつくためにもがき苦しみ絶望していく繊細な心理が切々と描かれている青春物語。
二人がすれ違い始めたきっかけ、鞘音の人気が徐々に広まるなかで共に活動する主人公に他人から向けられた何気ない一言。そして、幼かった二人の関係を決定的に引き裂く出来事。
実家も近所で親同士の仲も良く、田舎ゆえに近所の人はみんな顔見知りにほど近いため、主人公と鞘音のことをよく知る住人は数多くいます。昔からの悪友であるトミさんの目線からは、二人を交えて自転車を乗り回して遠出をした思い出を語られ、母校の先生からは無邪気に音楽を楽しんでいた頃の姿を思い起こされ、田舎特有の狭いコミュニティゆえに幅広い年齢層から親しまれている情景に温かみがありました。
天才ゆえに孤立した桐山鞘音と凡才ゆえに苦悩する主人公の心境の変化と、二人のすれ違う原因と真正面からぶつかり合い幼き頃のような関係を取り戻すというシーンも胸が熱くなるようなシチュエーションでドラマチックな展開が満載で素晴らしかったですが、それ以上に二人の両親、悪友のトミさんとその家族、母校の先生の存在が何よりも大きい。ここまで無償の愛を注いでくれる田舎の温かみが、やさしさにあふれていて感動しました。

再会を果たした二人の関係が青春を取り戻していく光景を、主人公に因縁を抱えてツンデレ気味な幼馴染みが徐々にほだされていく変わりようと合わせてお楽しみください。

キミの忘れかたを教えて (角川スニーカー文庫)

キミの忘れかたを教えて (角川スニーカー文庫)