働きたくない村人のラノベ日記

ラノベの感想ブログ。開設2014年5月30日

転生王女と天才令嬢の魔法革命

転生王女と天才令嬢の魔法革命 (富士見ファンタジア文庫)

《あらすじ》
幼い時に前世の記憶を取り戻した王女・アニスフィア。魔法が使えないため貴族からの評価は低いが、独自の魔法理論を作り、一人で研究を続けていた。彼女はある時、天才公爵令嬢・ユフィリアが次期王妃の座から外される場面に遭遇する。アニスフィアが彼女の名誉を回復するために選んだ方法は、一緒に住んで魔法の研究をすることで!?「ユフィ、私と一緒についてきてくれる?」「望んでくれるなら、どこまでもお供します。アニス様」キテレツ転生王女とクール天才令嬢との出会いが国を、世界を、二人の未来を変えていく。王宮百合ファンタジー開幕!

マゼンタ公爵家の令嬢であるユフィリア・マゼンタの次期王妃としての未来も突然の婚約破棄に断たれ、自らの役割を失い空虚な日常に陥ったところに現れたキテレツで自由奔放なアニスフィア王女。キテレツな転生王女で王位継承権も自ら放棄し、魔法が使えないながらも魔法を再現する魔法科学の研究に没頭する自由奔放な性格とクールな天才王女との出会いが、新たな世界を切り開いていくファンタジー作品でした。

魔法が使えないがゆえにこれまで当たり前に使われてきた魔法に関するあらゆることへの探究心が刺激され、魔法は神聖なものとして捉えられていた固定概念を覆す理論を次々に編み出す。
そんな魔法に関連する世界観の構築が圧倒的なボリュームと文章量で描かれ、細部へのこだわりが未知だった現象がドンドン具現化されていき、魔法が持っている未来への可能性がアニスフィア王女の手により切り開かれていく姿に胸が躍りました。彼女の手により産み出された発明品の数々も物語のなかでチラホラと日常生活を彩るアイテムとして活躍していて、将来のアニスフィアの研究の成果が楽しみでしかたがないです。

そして、王女としての嗜みよりも研究者としてのあくなき探究心に人生をささげるキテレツな行動が王宮内で常に騒動の火種になっていて、常に波乱が巻き起こるドタバタコメディ感も重厚なファンタジー世界における箸休め的なクッション材になっていて面白かったです。ときには王女としての振る舞いが求められる反面、文字通り王宮を飛び出して自由に研究に没頭するギャップが効いてました。さすがに一国の王女が研究の材料集めをしていたら高ランク冒険者になっていたのは父親の胃に風穴があくレベル。

公式は王宮百合ファンタジーと銘打っているけれど、“百合”の要素は除外して王宮ファンタジーくらいがちょうどいいと思いました。
それと婚約破棄を申し出たアルガルド王太子と元平民の男爵令嬢レイニを中心にしたエピソードが極めて少ないため存在感がほとんどなかったです。全体的にあれもこれもと内容を詰め込み過ぎていたイメージがあり、もう少しシンプルに場面が展開していけば、渦中の中心にいる二人を登場させたエピソードも書けたのではというのが個人的な印象です。あくまでも願望レベルであって、物語はこれはこれで面白かったです。

2巻では転生王女が手に入れたモンスターの素材がどんな成果をもたらすのか。とても楽しみです。