《あらすじ》
「わたし、〈天命評議会〉……辞める」
誰にも逆らえない「お願い」の力で世界を変えてきた日和。せいいっぱい世界を良くしてきた、はずだった。でも――
〈天命評議会〉の活動のなか、日に日に心を擦り減らす日和を見かねた深春は、彼女を〈天命評議会〉から抜けさせる。
しかしそれは、世界の情勢を狂わせ、二人の関係にも大きな亀裂をもたらしていく。少しずつ、しかし確実に壊れていく日常、見慣れた風景。そして――深春は見なくて済んでいた崩壊を、ついにその目にする。
「好きと言ってもらえて、大切にしてもらえて、とてもうれしかった――。元気でね、深春くん」
これは壊れたままのセカイで、それでも普通の彼氏彼女になりたかった二人の、もしかして、最後の恋物語。
聞いてしまえば誰にも逆らえないお願いの力。世界の情勢を決定的に変える力を持つのは田舎に暮らすごく普通の女子高生。
壊れていく世界を保つため『天命評議会』の創設者として活動を続けてきた日和が、深春とごく普通の彼氏彼女の関係になるため脱退を決意する。
世界は終焉へと向かい、深春の周囲もじわじわと影響が及び日常生活を送るのが困難な状況になっていく。
日和を中心とした“世界の終焉”と“恋の物語”の異なる二つのテーマがせめぎ合うなか、それでも今の日常に希望を抱き普通の彼氏彼女としての日を過ごす光景が切なくもあり、何故こんな辛い状況に立たされなければいけないとかと強く憤りを感じさせられました。
商業作品として気持ちのいい読後感を期待していたのなら到底許せる内容ではないけれど、どこかで日和と深春の関係が自然とこうなることは予想はできていたので、メンタルへのダメージは最小限で済みました。
1日経ち、2日経ち、決して好転することのない世界で、天命評議会を脱退した日和が手に入れたささやかな普通の彼氏彼女の関係。
そんな日々に満たされたからこそ、日和のなかで天命評議会を結成した原点を思い出し、決断を下すことになった。
1巻、2巻に比べたら描かれる光景はとても凄惨なもので記憶に強く刻まれる作品に感じました。自分も昨年のこのラノで投票対象に選びましたけど、その頃よりもさらに素晴らしい作品になっていて読後感はともかくますますこの作品を推したい気持ちになりました。
可能であればこの作品を結末まで追い続けていきたいです。