《あらすじ》
「川田、完全に取り憑かれてるね。オシャレデザインの魔物に!」私が見せたカバーデザインを見て、幼女編集長はそう言い放ちました。そんな…デザイナーの海老沢さんと一緒につくった、渾身のデザインなのに!編集長には、お寺でオシャデザ魔を秡ってこいとまで言われる始末。ぐぬぬぬ。隣の岩佐さんや井端さんにも見せるものの、「あー、これはお寺だね」「サブカル魔にも取り憑かれてるんよ」やっぱりこの展開!結局、井端さんが魔を秡ってくれるというのですが…?ゆるふわ☆編集部るぽラノベ、第4弾登場!
ラノベ編集部のゆるふわ感は微塵も感じられないですよ。むしろ社員が酒とストレスで肝臓の数値に一喜一憂して、漢方薬がデフォルトで備わっている生活にこの世のブラック企業の実態を見せられました。嘘をつくときに少しだけ真実を混ぜるように、フィクションのなかに少しだけノンフィクションを混ぜられていて実体験をもとにネタに執筆されていたらマジで地獄ですね。いつか編集長の傍若無人を告発した暴露本として売り出されたら爆笑ですわww
中でも個人的に興味深く読ませてもらっていたのは、川田が担当編集を交代してはじめて組む作家と新作を組むシーンでした。自分も様々なラノベ業界ものを読んできたのでプロット(物語・小説・戯曲・映画などの筋立て。筋。構想:大辞林 第三版の解説)を組んだり、ラノベ市場を込みしてどのような方向性で新作を進めていくか煮詰めていく作業を作家と編集で行っていることはある程度把握していました。ラノベ市場も学園ラブコメや異世界ものがブームだと言われたり、Web小説が売れる時代旧態依然とした出版方法では売れないなどの噂を耳にしたことがあります。
今回は新人賞受賞からギギギ文庫で書き続けている作家の新作を前に、作家の持ち味を活かした作風にするか否かで作家と編集の間で議論するシーンがありました。作風を変えつつ自分の作品の持ち味を活かすように勧める編集者の意見や返答を渋る作家の心境について多面的な言及が肉付けがされていて、目の前でラノベ編集者と作家との間で交わされているかのようなリアリティがあり面白かったです。次巻も楽しみです。