働きたくない村人のラノベ日記

ラノベの感想ブログ。開設2014年5月30日

ロクでなし魔術講師と追想日誌 5

ロクでなし魔術講師と追想日誌 5 (富士見ファンタジア文庫)

《あらすじ》
魔術の失敗で、システィーナがグレンの飼い猫に!?―『猫になった白猫』。惚れ薬によってルミアが、全校生徒から追い回されて!?―『勃発、愛の天使戦争』。あんなに好きだったのに…どうして苺タルトはリィエルを裏切ってしまったのか―『リィエル捕獲大作戦』。そして短編集初主演!特務分室室長時代、イヴの華麗なる日々(笑)を描く『室長サマの憂鬱』。ドラゴンマガジン誌上の大人気エピソード四つを収録!そして―「…人の善悪を、人が推し量ってはならないよ、グレン」それは、グレンとジャティスが同僚であった頃。それぞれの正義を争う因縁の秘話が、ついに解禁―!

特務分室室長のイヴは登場した初期の頃はかなりクレイジーで悪役なイメージが強かったけれど、学院の教師に就任してからは生徒の面倒見も良くて好かれる大人な女性として丸くなってきていた気がします。
しかしその実、特務分室の室長時代はかなり同僚には手を焼いていて悩まされる日々が続いていたらしく、『室長サマの憂鬱』を読む前後でこれまで抱いていたイヴに対するイメージが覆されました。
イヴは最初からまともな人間でした。根が真面目過ぎて胃痛に悩まされる悲劇の女性管理職でした。ポジション的には最初期の頃のシスティーナに近い理不尽な仕打ちにキレてツッコミを入れるまともな人間でした。そして、この短編を最後まで読むと、イヴに対する憐みの感情も芽生えてしまいグレンと仲良く洒落こむ平和なひと時を与えてやりたくなってしまいます。

そして書下ろし短編はジャスティスとグレンが同僚であった頃、二人で赴いた任務先での事件が描かれていました。
兼ねてからジャスティスの掲げる正義を順守するアンコントロールな言動は、グレンの正義と衝突する場面が多々あったようです。
現在では袂を分かち、ジャスティスはどこで何をしているのか定かではありませんが、彼がグレンを特別視するに至った出来事が描かれていて興味深かったです。あのジャスティスをして動揺を抱くグレンの言動。『100回中99回負ける戦いでも残りの1回で勝利を引き当てる男』の真髄とそれを可能にするグレンの正義。
本編では決して見ることのできない、二人が同僚として活躍していた時代の真正面からの正義のぶつかり合いが激しくて引き込まれました。

短編集としてコンスタントにキャラクターの可愛さ・楽しさなどのポップな展開を描きつつ、本編でまだ語られていない過去のエピソードが埋められていく1冊でした。