働きたくない村人のラノベ日記

ラノベの感想ブログ。開設2014年5月30日

賭博師は祈らない

賭博師は祈らない<賭博師は祈らない> (電撃文庫)

《あらすじ》
十八世紀末、ロンドン。賭場での失敗から、手に余る大金を得てしまった若き賭博師ラザルスが、仕方なく購入させられた商品。―それは、奴隷の少女だった。喉を焼かれ声を失い、感情を失い、どんな扱いを受けようが決して逆らうことなく、主人の性的な欲求を満たすためだけに調教された少女リーラ。そんなリーラを放り出すわけにもいかず、ラザルスは教育を施しながら彼女をメイドとして雇うことに。慣れない触れ合いに戸惑いながらも、二人は次第に想い通わせていくが…。やがて訪れるのは二人を引き裂く悲劇。そして男は奴隷の少女を護るため、一世一代のギャンブルに挑む。第23回電撃小説大賞・金賞受賞作!

アウトローな世界に身を置く賭博師に科せられる暗黙の了解や若き賭博師ラザルスの貫く独自の価値観が色濃く物語に表れていて、賭博師が主人公という独特の物語を味わうことができる素晴らしい作品!

多額の金銭が飛び交うギャンブルで生活を成り立たせるために己の技術に磨きをかけ、賭場を相手に稼いでいく賭博師たち。そして、時には非合法かつ暴力的な手段をいとわない賭場主を相手に細く長く生き延びていくための賭博師のもつ賭場においての引き際。そんなギャンブルの世界のディープな光景が詳細に描かれているために、これまで数多く世に出てきた作品群のなかでも存在感を表わす内容を感じさせるので、物語の展開がどれも新鮮。
なおかつ、フィクションとして描かれている物語のなかに、登場人物たちによる実在する妙技も練りこまれているため、リアリティがグッと強まって物語の世界に飲み込まれる面白さがある。

イラストの絵柄は比較的ポップな印象が強く出ているので、血生臭く残忍な行為をいとわない人間が登場する物語をソフトに演出してくれて読むのがとても入りやすいです。ライトノベル業界がほこる電撃小説大賞金賞の肩書に嘘偽りのないクオリティがある作品なので、是非読んでみてください。