異次元の扉が開き、人間の想像力から発生する怪物“グラフ”が現れる日本。その災厄は、次元狭界管理機構に所属する能力者たちによって食い止められていた。最強の能力を持ちながら、「弱者を育てて強者を倒す」のが趣味の笹宮銀の下に、新たな能力者・篭目純が現れる。“小鳥を出すだけ”というポンコツさに銀は喜々として指導を開始。“自分だけの特訓”でなくなり拗ね気味の口原琴音も巻き込んで、二人同時の能力開発&レベルアップを試みるのだった。そんな時、“グラフ”が実体化し、街中で姿を消すという最悪の事態が発生!銀たちは緊急出動するが―!?
『第27回ファンタジア大賞金賞受賞作第2弾』
異能力において【炎を操る能力】や【身体能力を底上げする能力】などのほうがシンプルで扱い方法が明確になっているため、あとは使う人間の器量と才能と努力次第でグラフティとしての力の優劣が決まる。
笹宮のもとに新たな能力者・篭目の【小鳥を出すだけの能力】と聞いてまず思い浮かぶ活用方法は、偵察のためのおとり的なものがせいぜいいいところ。
だがしかし、災厄戦線のオーバーロードにおいては『使えないグラフティなんて存在しない!』と言わんばかりに、【小鳥を出す能力】をあらゆる観点から実験・検証・考察を行うことで、長所を磨き上げていきます。新しい可能性を発見したときの鳥肌が半端じゃない!
「小鳥を出すだけ? そんなんじゃ近接戦闘になったら術者が隙だらけで使い物にならないじゃん」と読みながら思ったりもしたけど、グラフティありきの強さだけでなく、フィジカルとグラフティを併用した臨機応変なバトルを繰り広げてくれるところが特に面白かったです。
笹宮室長の【ザコ育成プログラム】を受けた口原琴音VS篭目純の対戦カード。一人に一つの能力が原則のグラフティ戦において相性はある程度存在するんだろうけど、この二人の能力においては決定打が存在しない。その分、個人的に自分好みの異能力バトルを楽しむことができてもう満足です。
異能力バトルのラノベとしては逸品でした。