働きたくない村人のラノベ日記

ラノベの感想ブログ。開設2014年5月30日

ユリシーズ ジャンヌ・ダルクと錬金の騎士1

ユリシーズ ジャンヌ・ダルクと錬金の騎士1 (ダッシュエックス文庫)

《あらすじ》
十五世紀、フランス王国は王位継承権を巡り、イングランド王国と苛烈な戦いを繰り広げていた。そんな中、貴族の息子でありながら魔術や錬金術の研究に没頭する少年モンモランシは、パリの王立騎士養成学校でブルターニュ公の妹リッシュモンら、多くの騎士・姫騎士候補に囲まれ、慌ただしくも充実した日々を送っていた。だがアザンクールの戦いでの大敗によって、フランスと彼らの運命は一変する。パリが陥落し、騎士養成学校も閉鎖され、すべてを失いお尋ね者の流れ錬金術師となったモンモランシは、逃亡先の村で不思議な少女ジャンヌと出会う…。混沌の百年戦争を描き尽くす歴史戦記+能力バトル+伝奇ファンタジーの三位一体巨編!!


混沌の百年戦争を舞台にした歴史戦記を書き上げるうえで、戦争の行方を左右する重要なキャラクターの背景を懇切丁寧に作りこんだ結果が、超特大ボリューム(1冊約450ページ)の完成度をほこって市場に出回ることになりました。読み応え・完成度・ストーリーのどれもがいろいろな意味で凄かった作品でした。
錬金術師・モンモランシが幼少時代に過ごしたパリの王立騎士養成学校で充実した日々を送っている姿と、そこで出会った騎士・姫騎士候補の学友たちと交わした『ずっと友達でいよう』という約束。貴族としての生い立ちも立場もことなるなかで、何のしがらみもない純粋な子供たちが描くこの姿が、やがて迎える百年戦争によって無残に引き裂かれる一因になると思うと心苦しい限り。悲劇的なストーリーが多く書かれている中でも、主要なキャラクターの背景が細かく書かれているだけあって、戦争の理不尽さとそれに否応なく巻き込まれる姿に同情したくもなりますね。
敗戦国となって彼らの運命が一変して、かつての学友たちが戦争の渦中に巻き込まれるなか、錬金術師・モンモランシの活躍によってこの戦争にジャンヌという一縷の希望が見えてくる。たった一人の少女の力で大局を揺るがすほどの能力はないが、それでも人間を超越した能力が今後の戦争の行方を左右するのはたしかだけど、能力を獲得する過程でトラブルがあったおかげでその力はとても不安定なもの。重要な局面の戦闘を繰り広げているときの緊張感と決して一筋縄でいくことのないこの戦争を無事に乗り切ることができるのか。
このページ数と作品の設定の多さを受け入れられるのであれば、読んでおいて損はないかと思います。