《あらすじ》
「もう、絶対に足手まといにはなりません!」技師としての腕が評価され、自らの力でカズラの下へとやってきたバレッタ。予期せぬ再会に驚くカズラだったが、喜ぶのもつかの間、同盟国のクレイラッツと敵対国であるバルベールが接触している可能性があることを彼女に伝え、長く慎重に考えていた製鉄技術の導入を相談する。一方で、カズラはこちらもずっと気になっていた“異世界に続く部屋”の正体を問いただすべく、遂に父・真治に電話をするのだが――。「小説家になろう」発、異世界救世ファンタジー待望の第六弾。
日本と異世界を繋ぐ部屋を経由して異世界に運び込まれる技術と物資。イステール領の技術が発展するまでの土台になる、職人たちが日本の技術の一端を吸収して成長するに至るまでに対する細かい肉付けがされていて読み応えのある内容でした。もちろん、異世界に持ちこまれた『製鉄技術』『ガラスの製造方法』『耐火レンガ製小型木炭高炉』などの情報に対する結果だけを抽出していくのもテンポだけを考えればありだけれど、それらの技術がもたらすイステール領に対する影響や、周辺国の木材の使用量の増加や製鉄技術の発展による技術水準の向上がもたらす影響など、ひとつの内容からガンガン掘り下げていく展開のしかたというのは物語に深みが感じられて個人的にはすごく好みです。
バレッタとリーゼの初邂逅をはたした後の人間関係は、カズラをめぐる一触即発の空気に達することは微塵もなく、お互いの生来の人間性もあって仲の良い関係を築けていてホッとしました。カズラに向けたハッキリとした感情をぶつけるシーンはないものの、何気ないやり取りからときおり素の感情が漏れ出たときのリアクションがまた可愛かったです。
日本と異世界をつなぐ部屋の正体やそれをひた隠しにする父親の存在がいまだに明かされない部分が気になるところではあるけれど、とりあえずは新刊が早く読みたいです。ただそれだけです。