《あらすじ》
大学二年の雪斗には気になる女性がいた。芸術科の小海澤有紗。無表情、無感情で人と関わろうとせず、そこかしこに絵を書き散らすも、その落書きが数百万の価値を生む百年に一度の天才。人とのコミュニケーションが断絶してしまっているそんな小海澤さんが気になり、なんとかお友達にこぎつけた雪斗。しかし天才との変わった交流を楽しむはずが、彼女の重大な秘密を共有することになり―。次元が違う彼女との、もどかしくピュアなキャンパスラブストーリー。
天才のオミサワさんは、三つほど次元が違う人だった――。
ファミ通文庫の恋愛ものは傑作率が高いです!!
“次元がちがう”というワードが比喩的表現なのか物理的な表現なのか。序盤で描かれた芸術学部の小海澤有紗の経歴と経済学部の今城雪斗との出会いや大学構内での有紗の人物評を総じて“次元がちがう”という表現なのかと思いました。しかし、徐々に真相が明らかになってくると有紗がコミュニケーションを断絶している理由や彼女の身に起こった悲劇の全てに辻褄があい、そんな彼女に対して積極的にアプローチをして手を差し伸べる雪斗の姿が眩しすぎる。
結論から言えば“次元がちがう”有紗の秘密に関わることが雪斗の身の破滅に直結することを危惧して、距離を取ろうとする有紗と彼女を救うために危険を顧みずに関わろうとする雪斗という構図が出来上がったときには、二人のラブストーリーが本当にピュア過ぎてフィクションでしか味わえない真っすぐな恋愛が描かれていて荒み切った20代男性の心にグッと刺さりました。
これほどまでに危険な壁を乗り越えて結ばれた二人の恋愛には、その先の人生も間違いなく仲違いすることなく結ばれる人生が明確にイメージできるので、物語が幕を閉じたときの読後感はとてもスッキリしたものになり、ラストに用意された有紗の描いた絵画が彼女の人物像を一変させる愛らしさがあふれていてとても癒されました。
単巻完結でも十分なピュアなラブストーリーでファミ通文庫がほこる素晴らしい作品ですので、是非読んでください。
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