働きたくない村人のラノベ日記

ラノベの感想ブログ。開設2014年5月30日

不殺の不死王の済世記

不殺の不死王の済世記 (ファミ通文庫)

《あらすじ》
伝染病で死にかけていた少女ミラを救ってくれたのは、禍々しい動く骸骨、不死王・テリオスだった。テリオスはスケルトンを労働力として提供し、生き残った子供たちに勉学まで教えてくれた。最初は怖がっていた子供らもその誠実さに打ち解けていく。特にミラは才能があると魔法まで教わり、テリオスの弟子としてメキメキと才覚を伸ばしていた。しかしある日、スケルトンが出没していると国から討伐隊が派遣されてしまい――!? 誰も殺さず世界征服を目指す不死王と、彼を支えた銀髪の乙女の伝説、開幕!

famitsubunko.jp

世界では常に、病や飢餓や戦争で人が無くなり続けている。世界から恐れられている不死王・テリオスが人間を誰も殺すことなく世界を平和に導くまでの物語。
伝染病により死に瀕していたところを救った少女・ミラには魔法の才能があり、テリオスが掲げる目標には彼に協力してくれる人間ひいては優秀で優しいものが必要不可欠。
そんな、不死王のテリオスと最初の弟子であるミラの出会い。突如、村を襲った伝染病により両親を失ったミラがテリオスの教育を受けてメキメキと成長していき、やがて魔法の力を手に入れた彼女が敵となる人間を目の前にしたとき、弟子としての矜持を貫くか否かの瀬戸際に立たされる。
世界を征服に導くという壮大なスケールを描きながらも、どこか紳士的な骸骨のテリオスを中心とした子どもたちとのほのぼのとしたやり取りに平和になった先にある世界の縮図のようなものが感じられてとても心温まる作品でした。
それでいて人間らしく振る舞いながらもテリオスのいでたちは文字通り骸骨そのもの。生前は7人の女性を娶った骸骨も下半身の棒は朽ち果て、情欲も抱かない存在に成り果てたけれど、少女ミラを丁寧に扱う姿にどこか人間と魔物の関係を越えたラブコメの波動が感じられます。村で年長の少年からは変態骸骨と不死王の威厳も消し飛ぶ不名誉な呼び名がつけられる始末。

程よくコメディ要素が効いていて終始飽きることなく楽しめる作品でした。ファミ通文庫デビュー作『女神の勇者を倒すゲスな方法』が好きな人にはピッタリの作品だと思います。