働きたくない村人のラノベ日記

ラノベの感想ブログ。開設2014年5月30日

続 この大陸で、フィジカは悪い薬師だった

続 この大陸で、フィジカは悪い薬師だった (電撃文庫)

《あらすじ》
教会から異端者とされた《悪い薬師》は、あどけない少女の姿をしていた……。
幻獣は癒やすが、人の治療には高額な報酬を請求する。そんな“教会の忌むべき異端者”は、可憐な少女の姿をしていた…。“悪い薬師”フィジカと共に旅をすることを決めた僕は、彼女が見据える先、『幻獣と人間の行く末』を信じることにした。僕は、異端者を狩る『角笛の騎士』様からフィジカを守るんだ。…そのはずなのに、なぜ僕の妹が目の前に?ロッテ、君は『騎士』様になったのかい…?ケルピー、ワイバーンカーバンクル。異世界にまつわるモンスターの神秘と医療を描く、新感覚ファンタジーの続編登場。

アッシュとフィジカが初顔合わせから成り行きでフィジカの旅に同行するまでの紆余曲折があってこそ、この二人がゆくゆくは夫婦になって子どもを成していく光景と一線を越えるときのプロポーズのシーンが強烈に刺激的だった。絵に描いたようなツンデレヒロインで、アッシュを突き放すような言動と態度をとっているけれど、根っこの部分で好意を抱いているのが何気ないやり取りのなかからにじみ出ているのが味わい深い。

イラストを担当しているのが“おるだん”さんでかなり好みのイラストレーターというのもあるけれど、フィジカの表紙イラストを筆頭にどのキャラクターのイラストも死ぬほど可愛かったです。それでいて物語の冒頭に挟む『害獣』のイラストのクオリティーも高くて、作品の世界観をより形作る一因にもなっていて素晴らしかったです。

この作品の物語の柱にもなっている『害獣』と『人間』が生きる世界。アッシュのように固定概念にとらわれて害獣を『人間を襲う獣=退治するべき存在』と認識するのに対し、同じ光景を目にしているなかでフィジカの視点から読み解く害獣の生態と一連の行動に隠された真相。
相容れぬ存在であるはずの『害獣』に向けて、はじめは「害獣、狩るべし!!」で剣を構えて特攻していた彼の成長と変化は2巻という短い期間ながらも密に描かれていてすごく有意義な作品でした。
エゴを言ってしまえば、アッシュとフィジカのこの旅の続きをもっと楽しみたかったです(フィジカとの関係を築いた後日談も含め)
それでも、ひとつの形として完結を迎えたことがせめてもの救い。前作の『ひとつ海のパラスアテナ』に続き素晴らしい作品でしたので、次回作が書かれるのであれば是非とも楽しみです。

ひとつ海のパラスアテナ (電撃文庫)

ひとつ海のパラスアテナ (電撃文庫)