《あらすじ》
名声のために罪を犯した過去を恥じ、今は猟師として各地を旅する「私」。ある日、訪れた村で奇妙な警告を受ける。「森には秘薬を作れる『赤ずきん』が棲んでいる。赤い月の夜、彼女たちはオオカミの化け物に喰い殺されるが、決して救おうとしてはならない」。少女らと対面した「私」は、警告を無視して護り抜こうと決意する。だが、そのとき「私」は知らなかった。その化け物が、想像を遙かに超えた恐ろしい生き物だということを。そして、少女たちの中に裏切者がいることも―。第12回小学館ライトノベル大賞・優秀賞受賞作
赤い月の夜に現れる“ジュヴォーダンの獣”によって食い殺されていく赤ずきん。
化け物から赤ずきんを護るために立ち上がったひとりの猟師が、常識では考えられないような“ジュヴォーダンの獣”を相手にありとあらゆる策を張り巡らして逃げまどい、やがて敵の正体と真相にたどり着く。
世にも珍しいサスペンスホラーをテーマに売り出すガガガ文庫様の豪胆さには恐れ入りました。ホラーテイストで同レーベルから刊行されている作品と言えば『ハナシマさん』や『俺が生きる意味』などもありますが、本作もかなりエッジの効いた、それでいて『真剣に考えたら物語の真相に気が付ける』読み込みがいもあるので、多彩な魅力にあふれた良作だと思います。
強いて「ちょっと読んでいて気になる……」という点について言及すると、赤ずきんたちのキャラメイクをする間もなくジュヴォーダンの獣との決戦に挑んでしまったために、個々の赤ずきんのキャラクター像がイマイチつかめなくて脳のリソースがジュヴォーダンの獣の動向に割かれたこと。正直な感想は「今、喋ってるの何ずきんだっけ?」でした。
いや、『赤ずきんが持つ秘薬の効果の違い』や『主人公との会話のやり取り』などで要所要所にキャラクターの個性を色づける演出はあったけれども。ジュヴォーダンの獣を目の前に緊迫した状況を打開する展開を追うのに必死でそれどころではなかったです。
逆に考えたら、これから読む人は反面教師としてじっくり読んでいくことで、作品の魅力を十二分に楽しむことができるのだと思います。
ですので、たまには一味違ったジャンルを読みたい方がいるのであれば、是非とも手に取ってみてください。トラウマを植え付けてやります。
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