働きたくない村人のラノベ日記

ブログ開設2014年5月30日

読者と主人公と二人のこれから

読者と主人公と二人のこれから (電撃文庫)

《あらすじ》
この物語さえあれば、他に何もいらない。この小説『十四歳』と、その中に確かに息づく主人公、トキコがいれば―。だが、彼女は俺の前に現れた。灰色の毎日の始まりになるはずだった、新学年のホームルーム。黒板の前に立った彼女こそは、俺が手にした物語の中にいたはずの「トキコ」だった。物語の中にいる「トキコ」と、目の前にいる「柊時子」のあいだで、奇妙に絡まってゆく想い。出会うはずがなかった読者と主人公の物語。その結末に、あるものは―。

愛してやまない小説のなかの主人公の女の子がある日突然目の前に現れて、クラスメイトになったら……
読者と小説の主人公が出会い、言葉を交わしていく中で徐々に引かれあい、やがて想いを告げるまでを描いた青春の物語。
この二人の出会いを作った発端を紐解いていくなかで、二次元の女の子を三次元に呼び起こすシチュエーションを形作る土台に、きわめて現実的な理由を付けることで、神秘的にも思えるこの青春物語にリアリティを生み出して形にしているところが素晴らしかったです。

小説の主人公の“トキコ”の趣味嗜好から生活スタイル、実家での様子などなど、ありとあらゆる情報が網羅されている本を愛読する読者の出会い。小説のなかで感銘を受けた印象深い言葉を嬉々として語ろうとすると、過去の自分の恥ずかしい側面を掘り起こされて赤面する“トキコ”が可愛いのなんの!!
トキコ”を深く知りすぎているがゆえに、現実の“トキコ”を前に急速に想いを募らせていく心理描写も身もだえするくらい甘酸っぱく、その先にある《『小説の中のトキコ』と『現実のトキコ』、自分が本当に好きなのはいったいどっちなのか》で真剣に悩む姿も、この特別なきっかけでめぐりあった二人の出会いにふさわしい障壁になっていて、物語としてとても素晴らしい作品でした。

自分の中ではここ最近読んだ恋愛要素を含んだ作品のなかでは傑作に入ること間違いないので、是非読んでみてください。

ホテル ギガントキャッスルへようこそ

ホテル ギガントキャッスルへようこそ (ダッシュエックス文庫DIGITAL)

《あらすじ》
幼き日に命を救ってくれた皇国の騎士に憧れた少女・コロナは自分も騎士になるべく修行に励み、ついに騎士見習いとなる。だが、それが認められた翌日に大軍縮令が施行。いともあっさり職を失うも、気がつけばかつて最強とされた巨人砦で働くことになった。しかし、そこは大商業都市のシンボルとなるホテル・ギガントキャッスルへと様変わりしていて―。そこには、オークだとかオーガだとかドラゴンだとか、ありとあらゆる種族のお客様が訪れ、膨大な数で、そして時に厄介なリクエストがあった。それを一切拒まず応じる「最強のホテルマン」レイアとの出会いがコロナを変えることになる!!すべてのお客様へ最高のおもてなしをするホテルの物語へようこそ!!

どんな種族を相手にも最高のサービスを提供するホテルの物語。呪われた鎧に身を包み着脱な不可能な人間、気難しい性格で無理難題なサービスを要求するドラゴンなど。日々訪れる様々なお客様を相手に新人のレイアと最強ホテルマンのレイアが奮闘する日常を描いたお仕事系ファンタジー作品。
ファンタジー要素を含んでおり、訪れてくる種族によって文化も生活様式も食事も異なるため、どんなおもてなしをしたら満足をしてもらえるのか。その一点を深く掘り下げていくまでにリアリティーが追及されていて、想像力が刺激されるところが面白かったです。

鎧を脱ぐことができないお客様へ、ホテル自慢の料理を提供しよう
→頭部も外すことができず、ミキサーした食べ物を細い管を通してしか食することができない

鎧を脱がなくてもサウナなら気持ちよくなってもらえる
→金属製装備で熱を吸収したために、鎧の中の人が熱中症でぶっ倒れる
 →救命措置で水風呂に放り込んだら重量で浮かび上がることができずに、危うく溺死しかける

一考すれば「なるほど!」とうなずける展開に親近感もわき、なおかつファンタジー風にアレンジされていて物語として楽しめる素晴らしい作品。最強のホテルマンであるレイアと新人のコロナの日常がコミカルに描かれていてすごく面白いので、是非ともおすすめしたい作品です。

境域のアルスマグナ2 盾の死神と博士の絡新婦

境域のアルスマグナ2 盾の死神と博士の絡新婦 (MF文庫J)

《あらすじ》
“水葬の王”鳴海滝徳と乙姫に勝利し、“王”としての第一歩を踏み出した怜生。多忙な日々を送る彼の元に、一文字卿から送り込まれた護衛は、この世で最も嫌いな女性―武芸の師、切花白羽だった。彼女に常時護衛されながら、編入した神霊学部で“王”としての基礎を学び、学友達と過ごし、束の間の安息を満喫する怜生。しかし、敵は既に背後に迫っていた。偶然か運命か、敵も医療魔術師。そして…「私の名はレオ―レオ・フランケンシュタインだ」最強・最速・極悪の三拍子揃った凄絶過激な魔王の狂宴、恐怖と悲哀が綴る第二幕。輝く覇道を歩む者と、悪辣な外道を強いられた者。二人の「レオ」が激突する―!

王としての覇道を突き進み始めた怜生と敵対する王の登場。傭兵結社を生業にする実家との間に生じる確執。若くして新たな王として覚醒した怜生が放つ圧倒的存在感。凡人では到底たどり着けない思想を掲げる王としての威厳。覇道ファンタジーとしては、キャラクターの個性を強調する肉付けがしっかりされているため、独創的な物語りが展開されていくので非常に面白い作品です。

王 VS 王がもたらす破格のスケールでの異能力バトルは、お互いのやりたいことを貫くために目の前の敵を打ち滅ぼす。そんな意地とプライドが主人公や敵となった王強烈に出ていて、より覇道ファンタジーとしての一面を際立たせる物語になっていました。

棘道の英獣譚

棘道の英獣譚 (ダッシュエックス文庫)

《あらすじ》
第3回集英社ライトノベル新人賞 特別賞受賞作品! 仲間に見捨てられ、森で意識を取り戻したライザー・ゲフォンを待っていたのは、樹木と化した右腕だった。世界を飲み込まんと拡大する自然異産《棘の森》は、あらゆるものを黒い樹木に変えていく。漆黒と絶望の樹下、木漏れ日の中で出会った《眠りの魔女》に命を救われ、襲いくる獣との闘い方を教わるライザー。次第に彼は、人間離れした能力に目覚めていった。そして、《森の主たる竜》と《眠りの魔女》の時代を越えた因果を知ったとき、彼は結末へと向かい、立ち上がる。 愛する少女と世界の命運を背負い、戦う、小さな獣の英雄譚――。

世界をむしばむ《棘の森》とそこに潜む獣の脅威にさらされる人類、それに抗うため《棘の森》に立ち向かう人間たちの対立の構図が明確かつ神秘的に作中でも描かれていて、表紙のイラストの雰囲気との相性も抜群。
《棘の森》との奮闘を描くうえでカギとなる二人のイラストも全体的に自然な色合いに溶け込んでいて、かなり表紙力が高い作品なので買いましたが、内容も自分の好みにわりとあっていてとても面白かったです。

新人賞作品としても、王道の世界観を土台に登場キャラクターたちの間にある関係性も手堅く奇をてらったものがなかったけれど、高い水準で王道の物語を楽しめる作品になっていました。
物語の軸に『世界を飲み込まんと拡大する《棘の森》』があるだけに、森の中で出会った謎の少女と主人公の関係性が物語の核心に迫ったときの壮大なスケールで送り出す大激闘は胸が熱くなる展開でした。
イラストレーターがえいひさんであることも思いっきりバイアスがかかっているけれど、非常に僕好みにはまる作品で面白かったです。

クソゲー・オンライン(仮) 3「このクソゲーが現実だと私だけが知っている」

クソゲー・オンライン(仮) 3 「このクソゲーが現実だと私だけが知っている」【電子特典付き】 (MF文庫J)

《あらすじ》
世界初にして世界最悪のVRMMO“ソード&マジック・オンライン”には恐るべき秘密が隠されている。この仮想世界はゲームなどではない、現実なのだ―とバグで生まれてしまったササラキとアズラエルの娘・キサラが主張している。「キサラが生まれた世界はクソゲーなんかじゃないのです!みんな邪悪なる運営に騙されているのです!」もちろん誰も信じないが、運営が邪悪であることには全員が同意した。「じゃあ運営VSプレイヤーのイベントを開催して盛り上げましょう」「悪魔だね僕たち」どうしようもないクソゲー世界に生まれた少女と、クソゲー世界のゲームマスターは、わかりあうことができるのだろうか―VRクソゲー運営ラブコメ、第三弾。

ソード&マジック・オンラインの全ユーザーが容認しているクソゲーなだけに、ゲームならではの突拍子もない超展開から本当にありそうなバグ要素の演出のバランスが憎らしいほどに上手い。もっとも、この作品のように運営が投げ出したおかげで対応もままならないままにバグが放置されているクソゲーを好き好んでやりたいかと言えば、答えは「絶対に嫌です!!」となることだけは断言。他人がクソゲーで阿鼻叫喚する姿だから他人事のように見て楽しめる(笑)

ゲームの世界で処女のまま妊娠したメインヒロインのアズラエルは無事に出産にまで至り、娘を持つ一児の母になったわけだけど、『ゲームの世界で生まれた子供』が思いのほかに面倒くさい騒ぎを次々に起こしていて、さらに『ソード&マジック・オンラインクソゲー』が付け加わるともうカオス。
おまけにクソゲークソゲーと知っていてプレイするユーザーの感覚も狂っていて、『ユーザー』『ゲーム』『運営』の三拍子がそろって狂っているときてる。
これだけ馬鹿路線を突き進んでおきながら、真っ当とは言えないながらもラブコメとして成り立っているのだからもう奇跡としか言いようがないと思う。もっとも、不本意に結婚して不本意に妊娠して不本意に出産までして、リアルでは不可能な演出がゲームでは記号と数値の羅列でいとも簡単に成し遂げられるのだから恐ろしい。

気がつけばコミカライズ化まで到達して軌道に乗っている作品でもあるので、読んでみて損はないと思いますよ。

ナイツ&マジック 7

ナイツ&マジック 7 (ヒーロー文庫)

《あらすじ》
ボキューズ大森海へと乗り出したフレメヴィーラ王国飛空船団は、未知なる魔獣との遭遇により撤退を余儀なくされた。エルとイカルガは皆を護るべく奮戦し、無事に船団を逃がすも森へと墜ちてしまう。追いかけてきたアディも一緒に、二人は森の迷子となった。彼らを待ち受けていたのは予想だにしない出会い―『巨人族』との遭遇であった。巨人氏族同士の争い。普きものの大敵、穢れの獣。そして陰で蠢く小鬼族なる者たち―。巻き起こる戦いがエルとアディを呑み込んでゆく。孤立無援の二人は、しかしあきらめ止まることなどない。「ここで幻晶騎士を、作り上げます」生み出されるは驚天動地の異形の機体。争いの只中へと向けて飛翔する!

未知なる魔獣を相手に苦戦を強いられ撤退を余儀なくされたエルとアディ。逃げ延びた先の森で出会った巨人族と共にこの窮地から脱出するための手段を探しつつ、打倒魔獣を掲げる。
幻昌騎士を研究するための充実した設備もマンパワーも足りない森での生活のなかでも、エルの幻昌騎士へ向ける熱意は留まることを知らず、あらゆる可能性を考慮して網羅的に試行錯誤することで、新天地での強化に図る。そのときの巨人族の奇異の視線と未知のものに触れているときのリアクションが、在りし日の銀凰騎士団を見ているようでなつかしさにあふれた。
巨人族との研究開発が巨人たちの価値観に新たな可能性の道を切り開くことになりつつあることや、エルの知的好奇心を刺激する敵機の鹵獲など今後の流れを左右する展開が満載で、エルのさらなる活躍が期待される内容でした。

異世界転生ロボットファンタジー作品であるなかで、近ごろなかなかお目にかかることのなかったエルたちが個人で駆使する魔法技能も含め、ナイツ&マジックの華ともいえるロボットによるハイスケールバトルアクションも相変わらず抜群の読み応え。web小説書籍化作品で遅筆なために、刊行予定がなかなか決まらないのが悔やまれるくらいに面白い作品です。

アニメのほうに関しても順調に放送日が近づいてきていて、はたしてどのような映像作品となってファンを喜ばせてくれるのか楽しみでしょうがないです。

ネクストライフ 11

ネクストライフ 11 (ヒーロー文庫)

〈あらすじ〉
ついにアウラニースと並ぶ三大魔王の一角・大魔王アシュタロスが復活する。魔王の復活が活発化していたのは、ターリアント大陸ばかりではなかった。アシュタロスはその圧倒的な力で大陸の諸勢力を壊滅させ、新たな帝国を築き「暗黒時代」を再現しようとしていた。一方ファーミア大陸では、鬼と人とが共存するラーカ国に、魔王ヴァプラが降り立つ。鬼達に求められ、近隣の国に起きている不可解な状況を調べるうち、別の魔王にたどり着くのだが…。助かる道を求めて旅立ったラーカ国王は、流れ着いた先でマリウス達と出会う。暴虐な魔王達を止めることはできるのだろうか―。

大魔王アウラニースとの決戦もマリウスの勝利で幕を閉じ、気がつけば仲間に加わりまだ見ぬ魔王の討伐に挑むメンバーに。大魔王アウラニースを筆頭に配下の魔王クラスであるソフィアとアイリスの間に存在する絶対的な戦闘能力の差。ドラ〇ンボールなノリの急展開で強力な仲間が増えることで、大魔王を相手にフランクに言葉を交わす光景が周囲の常識的な感覚をもった仲間たちのリアクションを引き出しているところも面白い。ありていに言えば異世界召喚チートファンタジーに括ることができそうだけれど、ここまでシリーズ作品として続いてくると物語が独特の方向に流れていってひとあじ違った趣があって良い。
アウラニースを含め苦戦を強いられることがないほどに高い戦闘能力をもつマリウスが繰り広げるバトルが、いつもサラッと敵を倒して物足りないと思う人もいるかもしれない。しかし、バトルシーンを魔法の規模や視覚的情報を練りこんだ内容よりも流動的に戦局が移り変わる様子を丁寧に描写して、かつ二の手三の手まで策を張り巡らせた読み応えのバトルがタイプな自分には、『ネクストライフ』くらいの短いバトルでも違和感なく楽しめます。

ヒーロー文庫がほこる長期シリーズ作品のなかでもおすすめの異世界ファンタジー作品なので、是非読んでみてください。