シリーズ第15刊まで続いている作品ですけれど、内政・外交に日々邁進している善治郎たちの一挙手一投足の中にある何気ない言動の中から情報を引き出したり、“魔法”という力の価値を熟慮した政治的な駆け引きなど、登場人物たちが繰り広げる緻密なやりとりに込められた情報量が半端ではないのでいつも読み応えのある一冊でした。終わってみれば、物語全体を俯瞰したときの時間経過が薄く感じられますけど、それ以上に密度の濃い善治郎たちの日常が描かれているので不満は全くないです。
今回に関しては、『火刑に処されたヤン司祭の亡骸に、“時間遡行”の魔法を施す』が最大の山場でしたけれど、この作品の世界観のなかで魔法によって成し遂げた事実が今後の展開にどのように影響していくのかも含めて、とても楽しみです。