《あらすじ》
未知なる戦場「海上」で手痛い敗北を喫したイクタたち、カトヴァーナ海賊軍。驚異的な破壊力を誇る「爆砲」を装備するキオカ海軍に対して、もす戦略的撤退しかないと軍議がまとまりそうになったとき、海戦に関しては門外漢のはずの、ある少年が、爆砲艦への有効な対抗策を提言するのだった―。「肉を切らせて骨を断つ」がごとき、血で血を洗う激烈な海戦が幕を開ける!話題の本格派ファンタジー戦記、待望の5巻が登場。命ギリギリの容赦ない戦いは、激しさを増すばかり…!
キオカ海軍の戦艦に搭載された新兵器『爆砲』がもたらす飛距離と破壊力を前にして壊滅的な被害を被ったイクタたちのカトヴァーナ海賊軍。海上での戦いでは陸と異なり、戦艦の機動力が風や戦艦を操る技術などに依存する点が、この海戦において重大になってくるのが戦略眼と指揮を執る人間の腕次第というところ。
カトヴァーナ海賊軍が火力で圧倒的に劣る状況のなか、イクタの立てた奇策でキオカ軍との間にある戦力差を覆すまでの流れは、どちらもギリギリの戦いの中の緊張感と徐々に形成が逆転していく展開が最高に良かった。
このライトノベルに関しては、これまで数々の戦争に参じる中で言葉を交わしてきた人間が死を迎える機会がたびたび見られるので、その点が「もしかしたらイクタたちの中の誰かが同じ目に……」という憶測が生まれてきて、今回の海戦の舞台でもかなりの緊張感が味わえる展開でした。
敗北を喫した前回の戦いから転じて攻勢に出るカトヴァーナ海賊軍の方針を決めたイクタの立てた作戦。こちらから仕掛けた攻めの一手によってキオカ軍の『爆砲』をいかにして攻略していくかも見所ではあるけど、この作戦において『爆砲攻略後に劣勢に転じたキオカ軍が執る先の行動パターンの複数手までを読んでたてた作戦』というのに驚いた。キオカ軍の指揮を執る人間もイクタに負けず劣らず、イクタが想定しうる最悪の対応策で防御に回っていくあたりに、今回の海戦がいかに五分五分の戦いであるかが伺える。
ページを余すことなく活用しているために内容にも重厚感があったけどその分読み応えのあるライトノベルでした。これもまた、ライトノベル人気投票企画で上位に食い込む理由がわかる気がする。