働きたくない村人のラノベ日記

ラノベの感想ブログ。開設2014年5月30日

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンXI

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンXI<天鏡のアルデラミン> (電撃文庫)

《あらすじ》
イクタ・ソロークの推挙によって、三等文官として国政に携わることになる少女ヴァッキェ。アナライ博士の弟子で、イクタの妹弟子でもある彼女は、たしかに尋常な人材ではなかった。国政の場では、誰もが畏れる女帝が相手であっても理路整然と反論を声高に唱えて周囲を凍りつかせ、日常生活では、シャミーユの食事の場に乗り込んでいって「一緒に楽しく食べよう!」と女帝の顔をひきつらせる…。その無邪気さと人懐っこさと狂気を発揮する彼女によって、硬直した帝国や女帝シャミーユは、どのように変わっていくのだろうか―。

イクタ・ソロークの復活と女帝シャミーユと交わす何気ないやりとりが、幾多の死線をともに乗り越えてきたハロの裏切りと画策により荒れたカトヴァーナ帝国に、ようやく安泰がおとずれたことを実感させてくれます。
もちろん、シリーズを通してカトヴァーナ帝国に身を置くイクタとキオカ共和国の《不眠の輝将(笑)》ジャンの戦場を挟んでの軍の采配から、戦局の流れから敵将の思考を紐解く読みの深さは、戦記ファンタジーの最大の見せ場で文句なしに虜にしてくれる。そんなイクタと同じくアナライ博士の影響を色濃く受け、彼の推挙によりカトヴァーナの三等文官として国政に携わることになった少女ヴァッキュの活躍ぶりと、《一を聞いて十を知る》とはこのことか! と言わんばかりの見識の広さが末恐ろしい。
国の中枢に寄せられる陳情から、カトヴァーナ帝国がとるべき指針に自身の見解を述べつつ現状の帝国が抱えている問題点を指摘。アナライの弟子としての側面と、ヴァッキュの女帝に向けて公の場で堂々と気さくに語り掛けていく肝の据わり方。この巻で(たぶん)初登場のヴァッキュが刻みつけた成果と、シャミーユの皇帝としての立場がもたらした普段は見せることのない年相応の姿を引き出してくれて、なかなかに充実した内容でした。

ラストは『イクタ・ソローク』『ジャン・アルキネクス』そして『アナライ・カーン』が一堂に会し、『カトヴァーナ帝国』『キオカ共和国』『ラ・サイア・アルデラミン』による三国会議で幕を引いたわけだけど、シリーズをここまで読み進めていった身としてはこれだけの豪華なキャラクターが勢ぞろいしただけでもう鳥肌が立ってしょうがない。次巻は開幕からスロットル全開で迎えることになりそうで凄く楽しみ。