働きたくない村人のラノベ日記

ラノベの感想ブログ。開設2014年5月30日

精霊幻想記 23.春の戯曲

《あらすじ》
運命が分岐する選択肢、その先にあるのは――

超越者のルールを覆す手掛かりを求め、ソラと共に旅立ったリオ。
彼が最初に目指したのは聖女エリカが召喚された場所だった。
聖女の足跡を辿る中、リオは勇者の力について考察を深めていく。
一方、ガルアーク王国城に集った四人の勇者たちの中で千堂貴久だけが自己鍛錬の機会も断り、孤立の道を進んでいた。
そんな貴久の関心事項はただ一つ――綾瀬美春との関係修復のみ。

「亜紀は……いいよな。もう美春に許してもらっているんだから」

少女に恋焦がれた少年の行動は、やがて世界すらも歪め始める!!

かつての仲間たちから存在を認識されなくなったリオ。
彼がいない生活のなか、美春と貴久の間に生じた亀裂は日を追うごとに大きくなり、身の丈に合わない『勇者』の力と歪んだ精神性が相まってさらに二人の関係性は悪化の一途をたどる。
『異世界召喚』によって現代日本から剣と魔法のファンタジー世界へやってきたことで、これまで表に出ることのなかった人間性が浮き彫りになる形となったような会話が繰り広げられていました。
これまではリオの存在も影響して美春と貴久の関係性にある程度の指向性を持たせることができたけれど、リオのいない今は貴久のなかに燻ぶっていた感情が留めることを知らずにぶちまけられて、同じ『現代日本』から召喚されてきた知り合いたちとの関係性も修復不可能なレベルで悪化をさせ、かなりセンシティブな話題となっている感じでした。
『精霊幻想記』のなかでこれまで登場してきたキャラクターたちがリオの存在しない世界で過ごす日常は、どこか不穏な気配を漂わせる空気感のようなものがあって、一つひとつのことの顛末が無事に着地点までたどり着けるのか心配になることがあります。今回の美春と貴久の問題は最たるもので、はたしてリオのいない今どのような方向性で闇を見せてくれるのか気になるところです。
シリーズ第23巻も最高に面白かったです。


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