《あらすじ》
「……博道くん。たすけて……」
理不尽な大人の脅迫により演劇が出来ないほど傷ついた晴香は、心の拠り所に俺を求める。
でも……俺はもう晴香を求めてはいなかった。俺の心にはもう時雨しか居ない。晴香の心が落ち着けば別れ話を切り出そう。迷いは無い。時雨の与えてくれた『猛毒』が俺の心の奥底まで染み込んでいたから。だが俺は心するべきだった。
『猛毒』(あいじょう)とは身を滅ぼすが故に毒なのだと。毒々しく色づいた徒花が、堕ちる。"不"純愛ラブコメ、最終章――
恋人である晴香との決定的なすれ違いによって欠け落ちたものを埋めるような時雨との秘密の関係。
理解ができない恋人の考え、理解をしようとも感情が追い付かない恋人との関係。
時雨との刹那的な甘い日常に溺れるほどに破滅へと向かうことがわかっていても、時雨との不純な未来へと歩み続ける。
この作品が不純愛なのかそれとも純愛なのか。見方を変えればどちらともとれる作品だと個人的には思います。
三角関係が泥沼化した先に待ち受ける恋愛の結末の一例としてとらえたとき、どちらのヒロインも一歩も引くことなく本気の感情をぶつけ、仮にヒロイン間の格付けが済むことになったとしても、主人公との未来を断たれたときの喪失感を補うケア方法がないためにハッピーエンドにはならない。
完結するまでは不純愛ラブコメのインパクトの強さが先行して、とにかく一喜一憂させられて楽しめていられたけれど、いざ完結に向かうとなるとここまで絶望的な未来しかないのかと痛感させられました。
これがはたして主人公にとって、時雨にとって、晴香にとってのハッピーエンドなのか。いろいろと考えさせられる部分ではありますけれど、不純愛ラブコメのひとつの結末を目撃することができてとても興味深く楽しめた作品でした。